スティッチエラーの話

分割撮影した画像をソフトウェアで繋ぎ合わせてパノラマにする際に、繋ぎ目がきれいに合わずに「ズレ」が生じてしまうことを「スティッチエラー」と言います。パノラマ制作経験者の誰もがこのスティッチエラーを経験したことがあるはずです。

この原因は偏に、撮影精度が低いことにあります。(これ以外の原因はありません)

では、パノラマ撮影で撮影精度が低いというのは、どういうことでしょうか?

広角望遠に関係なく、すべてのレンズにはNo Parallax Pointというものが存在します。No Parallax Point は分かりやすい日本語にすると「視差が生じない点」になります。視差のある画像をレタッチ処理無しできれいに繋ぎ合わせることはできません。

このN.P.P.を中心点にして各方向の分割撮影を行うと、PTGuiなどのソフトウェアでスティッチエラーの無いパノラマを生成することができます。

言葉にすると簡単に思えることですが、でも実際にこれをきちんと出来ているパノラマ制作者は案外少ないのです。(PTGuiはとても優秀なソフトウェアですから、スティッチエラーの原因がソフトウェアにあることはまず考えられません)

Googleストリートビューで広く使われている「円周魚眼レンズで水平方向90°刻みで4枚撮影」の場合は、No Parallax Pointを正しく得ることは決して難しいことではありません。正しい手順を踏めばわずか数分の作業で完了します。

ですが、対角魚眼レンズなどを使った、Multi Row(複数列)撮影の場合は事情が変わってきます。Multi Row撮影ではストリートビュー撮影用とは別構造のパノラマ雲台を使いますが、正しいNo Parallax Pointを得る為の調整が少々面倒で、熟練のベテランで十数分、初めて経験する方だと1時間くらい掛かってしまう作業(キャリブレーション)が必要です。

このキャリブレーションに関して、しばしば英語圏のパノラマコミュニティで「このレンズとカメラとパノヘッドの組み合わせの調整値を教えてください!」という投稿を見掛けます。でもこれ、実はほとんど意味が無い行為です。

あらゆるパノヘッドのフレームにはスケール(距離目盛)が打たれていますが、このスケールの絶対的な基準というものが存在しません。ですから、同じパノヘッドでも製造ロットによってスケール表示が微妙にズレているということは、良くあることなのです。

パノヘッドのキャリブレーションでは、N.P.P. の誤差許容範囲は1mm以下と認識していただいて良いでしょう。この精度が保てれば、一般的なシチュエーションで撮影された元画像データはパノラマスティッチソフトウェア上でスティッチエラーを生じることなく高精度に繋がります。

そしてもう一つの理由としてレンズの個体差の問題もあります。一般に市販されているレンズは大量生産される工業製品ですが、皆さんが思っているほど品質が揃っている訳ではありません。特にカメラレンズの様に何枚ものレンズをとても高い精度で組み合わせて製品にする場合は尚更です。

ですから、パノヘッドのキャリブレーション、N.P.P.の調整は撮影者が実際に使う機材で行なう必要があるのです。

パノヘッドのキャリブレーションが正しく出来ていても、撮影時の失敗が原因でN.P.P.が正しく得られない場合もあります。が、これはまた別の機会にお話しましょう。

因に、当事務所ではパノラマの撮影と制作に関するコンサルティング、レクチャープログラムをご用意しています。ご興味を持っていただけましたらこちらをご覧下さい。お問い合わせはお気軽にどうぞ。

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